都政改革委員インタビューvol.4 あかねがくぼ嘉代子さん(杉並区)
「キャリアウーマンなんかやめちゃえ!」家族との時間を大切にしたくて起業
―あかねがくぼさんのこれまでの経歴を拝見すると、共働きで子育てをされながら起業されていて、バリバリのキャリアウーマンなのかなというイメージを持ったのですが……。
実は私はバリバリのキャリアウーマンでは全然ないんですね。もともとビジネスのコンサルティング会社で働いていたんですけれども、会社員としてやってきたところで子どもを授かりまして。核家族、共働きという状況で、まず保育園に入れるところから一苦労して、保育所に入れられた後も、今までと同じように働き続けることが難しくなってしまったんです。平日に家に滞在できる時間が一時間二時間しかなくて、そのあいだに家事をこなしていかないといかなくて、イライラしてしまったり、余裕がなさ過ぎて子どもに当たってしまったりすることも日常茶飯事でした。
子どもが0歳、1歳、2歳になるくらいまでは必死だったんですけれども、3歳4歳になっていたときに、もっと対話をする時間とか、自分の生活の部分を大事にしていきたいなと思いまして、「キャリアウーマンなんてやめちゃえ!」と。フルタイムでがむしゃらに働いていたそれまでの働き方を見直して、自分なりの働き方を作っていこうと思って起業したんですね。
「ワーク」より「ライフ」重視の働き方
―あかねがくぼさんにとって、起業はキャリアウーマン的な働き方を脱却して、生活の部分を大事にしていくための手段だったということでしょうか?
そうですね。もちろん、仕事と子育てを両立しながら、バリバリのキャリアウーマンとして働かれている方もいっぱいいらっしゃると思いますし、それはそれで素晴らしいと思うんですけれども、私はそれができなかったんです。悩んで、自分自身がどうしたいのかと考えたときに、私は正直、ワークよりライフだと思いました。
あくまで私個人の考え方ですけれども、私は子どもや家庭生活を犠牲にしてまで仕事をしようとは思えませんでした。まず「生活」があって、生活を豊かにする手段・自己実現の手段としての「仕事」だと思ったんですね。
週末に家族で出かけた時の一枚。
働く女性を下支えする仕組みを作りたい
―そういったあかねがくぼさんご自身の働き方の悩みが、だんだんと政治に対する思いへとつながっていった、と。
そうですね。最初は個人の問題としてやっていたわけですけれども、キャリアアドバイザーとして、多くの顧客の方にワークとライフのバランスのとり方を個別にアドバイスをさせて頂いていくなかで、多くの女性が同じような問題で悩んでいることに気づきました。
個人でできる範囲には限界がありますし、働く女性を社会全体として下支えするような、もっと公共性の高いテーマとして取り組んでいきたいと思いました。小池都知事がダイバーシティですとか、女性の活躍推進というところで旗を揚げられているということで、まさに私がやっていきたいことと一致しているというところも、大きかったですね。
2016年、女性のキャリア形成について講演。
夕方には家に帰れる働き方ができる社会に
―杉並区は待機児童問題のイメージが強いんですけれども、今回出馬される杉並区に関して、どのようにお考えでしょうか?
おっしゃる通り杉並区は待機児童問題が取り沙汰されることが多かった区なんですけれども、この一年・二年で状況はどんどん変わってきておりまして、住民との交渉を何度もやって、相当数の認可保育所を作っております。まだまだ気は抜けないんですけれども、解決の方向に向かっている状況です。ただ、子育てしながら働くのが当たり前という時代にあって、保育所の需要は年々増えているので、いたちごっこの部分もあります。
そもそも、保育所に入れたはいいけれども、問題はそれで終わりというわけではありません。「0歳、1歳、2歳の子どもにとって、12時間以上保育園に預けっぱなしになってしまうことが本当にベストなのか」と問題提起される保育士さんも多いですね。それぞれの家庭にご事情があるので、一概にダメとは言えないんですが、多くの女性が望んでいることかというと、それは違うのではないでしょうか?
たとえば、企業側が時短勤務ですとか、自宅勤務ですとか、柔軟な働き方をどんどん許してくれるようにしていって、夕方には家に帰れるように、夕食は一緒に食べられるようにしたほうが、ムリがないと思うんです。保育所に入れて終わりじゃなくて、働き方を変えていかないといけない。柔軟な働き方ができるようにしていくことが、私の役目だと思っています。
プロフィール
あかねがくぼ嘉代子(あかねがくぼ・かよこ)
1975年10月25日、福岡県久留米市生まれ。41歳。東京大学農学部を卒業後、人材系ベンチャー、日本IBM、アクセンチュアなどを経て、2015年にキャリアアドバイザーとして独立起業。20−40代を公私にわたり多数サポート。1児の母。