都政改革委員インタビューvol.5 鳥居こうすけさん(杉並区)
時代は超高齢社会 キーワードは「健康増進」
―鳥居さんはまだあまり情報が出てきていないので、本日はどんどんお話を聞いていきたいと思います。まず、鳥居さんはこれまでお仕事としてどういうことをやられてきたのでしょうか?
私はずっとノエビアという会社の研究所長をしておりまして、化粧品と食品と医薬品を扱う会社なんですけれども、急激に高齢化が進んでいく今の世の中にあわせて、化粧品・食品・医薬品のあり方もどんどん変わっていかなければいけないんですね。
たとえば化粧品で言いますと、「見た目の美しさを保つ」という従来の目的だけではなく、ストレス抑制作用があったり、気持ちを和らげたりする癒し効果があって、これからの世の中では化粧品のそういった役割を高める商品が重要になってくのではないかと。他にも、「健康増進」をテーマに、予防医学ですとか、「未病」の観点から、何ができるかというところでやってきました。
―そういったところから、どういった経緯で政治の世界に足を踏み入れようとお考えになったのでしょうか?
中学三年生の時、父が47歳で亡くなったんですけれども、周りの人に助けていただくことが多かったんですね。それから、私がお世話になっていた慶応大学の先生はアルツハイマーの研究をされていたんですけれども、「一億人の患者を救いたい」とおっしゃって、明確な対処法がないといわれているアルツハイマー病の根本治療を見つけていこうと、文字通り命を賭してやられていたんです。
そういった姿を見ているうちに、私も、自分なりのやり方で「人に寄りそった仕事をしたい」と考えるようになっていきました。現在医療費が41.5兆円かかっているなかで、医療も時代に合わせて形を変えていかなくてはいけないわけです。時代の変化とともに予防医学的な観点からの取り組みがとても重要になってきておりまして、世の中を変えてくには、政治の力が必要なんですね。そういった中で、私自身がこれまで企業で培った経験が活かされると考えました。
研究者は「I」じゃなくて「We」
―研究者といいますと、机に向かって一人で孤独に作業しているイメージがあるのですが……。
確かに研究は成果が出るまで華やかさはないですし、ものすごく地道な作業ですね。研究者は、周りの情報を仕入れて分析し、最終的には具体的なソリューションを作っていかないといけないんですけれども、研究者っていうのは、文系の方が思っている以上にチームワークが大事なんですよ。
先人に感謝しながら、先人の研究成果にのっからせていただいて、課題に対してみんなで解決策をクリエイトしていく。一人だけじゃ、できることは限られていますから、みんなでやることに意味があるんですね。いわゆるマッドサイエンティストという、ヘンな人もたまにいますけれども(笑)、ほとんどの研究者は協調性のある「いい人」です。私は慶応大学医学部の薬理学教室で7年間お世話になったんですけれども、先生はつねに「IじゃなくてWe」とおっしゃっていましたね。
医学部時代、結婚が決まった際に研究仲間からもらった寄せ書きT シャツ。
「希望の塾」に多い理系人材 「本質を見る力」で世の中を変えていきたい
―そういった研究者としての目線は、どのように政治に活かされていけるとお考えでしょうか?
研究者というのは、ものごとの本質をみきわめて、根本的な解決策を生み出していかないといけないんですね。本質を見るときに大事なのは、曖昧模糊としたものをきちっと把握していくこと。例えば、「気持ちいい」「心地いい」といったものも、研究によって数値化することで、その重要性がわかってくるんです。今回「希望の塾」の塾生にも、理系の人が多くてびっくりしているんですけれども、われわれはつねに批評家でなくプレイングマネージャーでなくてはいけないと思っております。
―最後に、鳥居さんのプライベートについても少し伺わせてください。息子さんが2人いらっしゃると伺っているんですけれども、鳥居さんはご家庭ではどういうパパなんでしょうか?
10歳と8歳の息子がおりまして、夕食は家族4人で取るようにしていますね。長男が小学校低学年になるくらいまでは、外にもよく連れ出していました。長男が「バスケが忙しい」というので、最近はあんまり行けていないんですが(笑)長期休暇は石垣島に行ったり、西表島に行ったりして、川や海で遊びました。シャコガイを家族でとったのも楽しかったですね。
私は研究だけじゃなく、家族も「IじゃなくてWe」だと思っています。子どもへの愛情は、妻には負けてしまうかもしれませんけれども、しっかり仕事をして、父親としての役目を果たしていきたいと思っています。
2013年、西表川にて子どもたちと。
プロフィール
鳥居こうすけ(とりい・こうすけ)1970年7月24日、大阪府大阪市生まれ。46歳。京都府立大学農学部芸農芸科学科を卒業後、同大学大学院を修了。慶應義塾大学大学院医学研究科にて博士(医学)取得。株式会社ノエビアの取締役研究所長に最年少で就任。現在、東京医科大学神経皮膚連携分子医学講座の客員教授。合気道初段。2児の父。